「やっぱり伸さんに頼んで正解! だ~い好きっ!」
「ありがとう、嬉しいよ」
身体を起こして抱きつく芽衣に、伸也は嬉しそうに笑った。
「ところで、ピカリンはど~なったのお? 順調?」
「うん。そっちも今晩には片付ける予定」
「スゴーい! いっぺんに済んじゃうね!」
芽衣が始末を頼んだのは小野寺だけではない。
もう1人の幼馴染み――“ピカリン”というあだ名の人物も、伸也に始末を頼んでいるのだ。
「じゃあコレ! 大事に使ってね!」
そう言って芽衣がポーチから、白い粉が入った小指サイズのビンを取り出し、伸也に渡した。
コレは伸也が小野寺に仕込んだモノと同じ種類の麻薬。
榊原病院が秘密裏に制作した新種の麻薬で、摂取すれば幻覚・錯乱状態を引き起こし、痛覚を感じなくなる。
そして、身体に入れた量によっては心臓発作を引き起こして死亡のケースもある、非常に危険で毒性の強いドラッグだ。
「ありがとう。それじゃ、僕は仕事するとしよう」
ゆっくりとベッドから立ち上がり、芽衣に手を振りながら部屋を出ていく。
「じゃあね芽衣ちゃん、愛してるよ」
「うん! 芽衣も愛してるよー!」
バタン
伸也が部屋を出て、数分が経過すると芽衣は疲れたように溜め息を吐いた。
「……はあ。何が愛してるよ、なのよ。キモイっての」
仰向けでベッドへ倒れる。
(まあ、あとはピカリンだけだし、それが終わったら用済みね。フッてストーカーになられてもウザいし、こっそり薬漬けにして殺しちゃえばいいもん)
芽衣には伸也への愛情など無かった。
ただ、邪魔者を片付けてもらうだけの便利な操り人形としか認識していなかった。
確かに伸也は美男子で、何でも言いなりになる良い男。
だが、それだけじゃ芽衣には物足りない。
その気になったら伸也並み、もしくは以上の男なんかいくらでも作れるのだから、伸也にこだわりはしないのだ。
全てを終えた時、芽衣は最初から伸也を消すつもりだった。
彼女にとって伸也は、ただの捨て駒にすぎない。
(もうすぐ、ぜーんぶ終わる! 好きでも無い男に愛想を使わずに済むんだわ!)
ご機嫌な様子で、芽衣は鼻歌を歌いながらホテルを後にした。
