伸也が向かった先は、寂れたラブホテル。
ピンク色のペンキは所々が剥がれ、看板に書かれた文字も1つ2つは無くなっており、扉にはスプレーで落書きがされている。
そのうえ若いカップルが寄り付きそうにない八百屋や魚屋が並ぶ、小ぢんまりした商店街に建てられている為、完全に悪い意味で浮いていた。
だが伸也はためらうことなくラブホテルに入り込み、勝手知った様子で3階の突き当たりにある部屋に向かった。
ギイイィ
古臭い音をたてて開かれた扉の先には、薄汚れたベッドに腰かける若い女性の姿があった。
ラブホテルとは思えぬ灰色の地味な一室に似合わぬ、桃色のフリル付きのロングワンピースを纏った愛らしい顔の女性は、伸也を見るなり笑顔を浮かべて飛びついた。
「伸さーん! 芽衣(めい)、会いたかったんだよー!」
フワフワなウェーブのかかった栗色の髪を揺らしながら、伸也の頬にキスをする。
「ゴメンね、芽衣ちゃん。忙しかったからさ」
そっと身体を引き離すと、芽衣はぷうっと頬を膨らませた。
だが不機嫌な顔も一瞬のうちに笑顔へ変わる。
「まあ許してあげる! 伸さん、ちゃんと仕事したみたいだし!」
「ありがとう。だから好きだよ芽衣ちゃん」
笑いあう2人。
