「……ここなら人目につかないだろう」
如月高校を出て、黒斗達は小さな広場に辿り着いた。
無闇に人に聞かれては騒ぎが大きくなりかねない為、人気の無い場所を選んだのだ。
黒斗と鈴が玲二に視線を向けると、彼は一息吐いてから事の顛末(てんまつ)を話し始めた。
小野寺が錯乱し、訳の分からないことを言っていたこと。
黒板に頭を打ち付けたこと。
自らの眼球を抉り取り、死んだこと。
事情聴取の為に、目撃者である1年E組全員が体育館に集められたこと。
全てを聞いた鈴は小野寺が亡くなったことに驚きを隠せなかったが、それ以上に小野寺が突然狂ってしまったことに衝撃を受けていた。
「いきなり叫んで、自分の目玉を取るなんて……異常すぎやろ……小野寺先生、今朝は普通だったのに……」
「うん……何を言ってるかも分かんなかったし、オレらの言葉も通じてなくて……こういうのも何だけど……その……まさに“キチガイ”そのものだったよ……」
小野寺がハサミで眼球を抉り取った光景を思い出し、身震いする玲二。
一方、玲二の話を腕を組み、黙っていた黒斗が口を開いた。
「…………おそらく、ドラッグが原因だろう。さしずめ幻覚・錯乱の症状か……」
その言葉に玲二がヒッと息を呑み、首を振って否定する。
「小野寺先生は優しくて良い人だったし、いきなり様子がおかしくなることなんか無かったよ。先生が麻薬中毒者な訳ないよ!」
「自らの意思で吸わなくとも、他人の手によって知らない内に麻薬を混入されることだって珍しくない」
黒斗の言ったことに何も言えない鈴と玲二。
確かに実際、飲み物などに麻薬や睡眠薬を入れられて、本人が気付かない内に薬漬けにされている事件は多発している。
小野寺がその被害にあったとしてもおかしくはないだろう。
「だとすると……誰が小野寺先生に薬を?」
「さあな……それを探るのが警察の仕事だろ」
他人ごとのように黒斗は言うと、腕を上げて身体を伸ばした。
「お前らも、知らない人間から貰った物を不用心に食わないことだな。次の被害者になりたくなければ」
「う、うん」
ゴクリと唾を呑んで、鈴と玲二が頷く。
(……これで1度目……)
不安そうな表情を浮かべる2人を尻目に、黒斗は小野寺に薬を盛った犯人の罪をカウントした。
