「……やっぱり入れへんようになっとるな」
1年E組に向かえる廊下の途中には、“KEEPOUT”と書かれた黄色いテープが張り巡らされており、立ち入りを禁じられていた。
さすが警察は仕事が早い。
「コラ、貴方達!」
黒斗と鈴の姿を見かけた佐々木は、直ぐさま駆け寄って来た。
「校内放送、聞いてなかったの!? ウロチョロしてないで、さっさと帰りなさいっ!」
「すんません……」
ペコリと頭を下げる鈴。
「そういうアンタは、何だって1年の教室の辺りをウロチョロしてるんだ?」
「貴方達みたいに、立ち入り禁止区域に入ろうとする子が居ないか見回ってるのよ! お願いだから、今日ばかりは大人しく帰ってちょうだい」
「はーい……」
額に手を当てて、疲れた様子を見せる佐々木に注意された黒斗と鈴は、その場を後にする。
佐々木から離れ、辺りに誰も居ないことを確認すると、鈴が黒斗に耳打ちをした。
「先生にはああ言われたけど……やっぱり、レイちゃんに何か無かったか気にならへん? 体育館にも行ってみようや」
「……いつもより聞き分けが無いな。さっきの大神の言葉を気にしてるのか? 裏では何をしてるか分かったもんじゃないってヤツを……」
「そ、そないなことあらへん。ただ気になっただけや。ほら、行こうや」
そう言って鈴は、先に歩き出していった。
黒斗も数秒遅れて、彼女の後を追う。
前を歩く鈴は、唇を噛みしめている。
(……ウチ、イヤな子や。クロちゃんにもウソついて、レイちゃんも疑って……)
“親しい人間には無条件の信頼をおくのか”
“君の友達も何も言わないだけで、裏では何をしてるか、隠しているか分かったもんじゃない“
大神の言葉が頭の中で繰り返される。
友達を信じるのは当たり前だと思っていた。
それなのに――
一瞬でも疑ってしまった自分が居る。
(……信じることが正しいのか、疑うことが正しいのか……ウチには分からん……)
見つからない答えに頭を痛めながらも、鈴は歩みを進めるのだった。
