「じゃあ、俺は帰りますね~。また店で会いましょ~」
「ええ。みきほが退院したら教えるわ」
将太が椅子から立ち上がる音がして、放心していたみきほは我に返った。
急いで、尚且つ物音を立てないよう自室に逃げ込む。
ガチャ
扉を開きみどりと将太がダイニングから出て来て、玄関から外に出ていった。
おそらくみどりは見送りの為に出たのだろう。
それを見たみきほは、ダイニングを経由して台所に向かったーー。
ガチャ バタン
戻ってきたみどりが玄関に鍵を掛け、後片付けの為にダイニングに向かった。
自分や将太が使っていたカップをまとめる途中、茶色い封筒と、5枚の万札が視界に止まる。
「ふふ……これだけあれば、しばらくは回し放題ね……」
合計15万の現金を見て、興奮のあまりみどりの口から感想が洩れる。
札を手に取り数を数えるみどり。
そんな彼女に背後から忍び寄る影ーー。
「ママ」
ここに居る筈が無い娘の声が聞こえ、みどりは勢いよく振り向いた。
そこには、濁りきった虚ろな瞳でこちらを見つめてくるみきほが立っていた。
左腕は包帯が撒かれていて、右腕は背中に隠している。
