「アイツの入院費用のせいで思う存分、打てなくてイライラするのよね。金が足りないったらありゃしない」
「へ~、金欠なんだ。……あ、もしかして俺を呼んだのは……」
将太の言葉を全て聞く前に、みどりが頷き口を開いた。
「前と同じ、十万で良いわ。ただ、あの娘が退院してからになるけど」
「りょ~かいです! こんなこともあろうかと、既に金は用意してあるんで」
そう言うと将太は、懐(ふところ)から茶色い封筒を取り出し、みどりに手渡した。
みどりは受け取った封筒の中を確認すると、満足そうに笑ってテーブルの上に置く。
「相変わらず準備が良いわね、ありがとう」
「いやいや、こちらこそ! 楽しみだなあ……みきほちゃん、2年前と比べて成長したかなあ」
「したんじゃないの? 知らないけど」
(……どういう、こと……)
会話を盗み聞きしていたみきほの身体が震える。
“前と同じ、十万で良いわ”
“相変わらず準備が良いわね”
“2年前と比べて成長したかなあ”
2人の会話と、やり取りの手際の良さに強い違和感を感じるみきほ。
─これ以上、聞いたら取り返しがつかなくなる。
そう思いながらも、足は石になってしまったように固まって動かない。
