「だ、誰よアンタ」
「母親の気持ちを知りたいなら、チャンスは今夜しかない」
「チャンス!?」
問いを無視して青年が言い放った言葉に、みきほが食いつく。
「そうだ。今夜23時すぎ、家に帰ってみればいい。母親の本心を知ることが出来るぞ」
「家に帰れったって……許可なく病院を出ることなんて出来ないし」
「大丈夫。その時になれば、行けれる」
そう言うと青年は、みきほの横を早足で通りすぎる。
呼び止めようとみきほは振り向くが、既に青年の姿は無かった。
「え……」
ほんの一瞬の間に青年が消えたことに驚愕する。
狭くて一本道の廊下で隠れる場所なんて無いし、曲がり角も歩いて数秒はかかる場所にある。
2、3秒で到達出来る訳がない。
(何なの……)
自分以外、誰も居なくなった通路で、みきほは立ち尽くすのだった。
