「…………」
玲二の言葉を聞き、今度はみきほが皆の視線を集める。
「……アンタ達には関係ない。仮にそうだとしても、これはあたしとママ、親子の問題でアンタ達がでしゃばってくるようなことじゃない!」
押し黙っていたみきほが声を張り上げ、黒斗達を睨みつけた。
「しょせん他人のアンタらには、あたしの気持ちなんか分かんない! あたしとママのこと、何も知らないくせに知ったような顔しないでよっ!!」
感情が高ぶると共に、みきほの目から堪えていた涙が零れる。
頬を伝い落ちた雫は、ベッドの白いシーツにパタパタと音を立てて吸い込まれていく。
止まらない涙を拭うことをせず、みきほは自由が効く右手でシーツを握り締める。
泣き出してしまったみきほに、鈴も玲二もかける言葉が見つからず、何も言えない。
みきほのしゃくりあげる声だけが病室に響く。
そんな中、黒斗が一歩前に出て、みきほに声をかける。
「ハッキリ言わせてもらう。風祭、お前は母親に依存しすぎだ」
「……!」
黒斗の淡々とした物言いに、みきほは顔を上げ、鈴と玲二は息を呑んだ。
「どうしようもない母親だったら離れていけばいいだろう。お前は18歳、世間では立派な大人として見られ、1人で生きていくのも十分可能な年齢だ。そんなになるまで、母親と一緒にいる意味なんてあるのか?」
「…………」
うつむいたまま、みきほは何も答えない。
自分でもよく分からないのだ。
母が好きなのか憎いのか。
大好きと言うには憎悪が邪魔をして、憎んでると言うには愛情が邪魔をする。
離れたいけど、離れたくない。
愛憎入り交じった矛盾する感情に、ただみきほは混乱することしか出来ない。
「……まあ、最後に決めるのはお前だがな」
「……うん」
掠れた声で、みきほは返事をした。
「……ごめん、怒鳴ったり、して」
「ううん、オレこそ余計なこと言って、ごめんなさい」
互いに頭を下げて謝罪するみきほと玲二。
「ウチら、そろそろ帰りますね。今日は安静にしたって下さい」
「あ、そういえば気になってたんだけど……あたしが入院してるの、どうして分かったの?」
「ああ、大神くんに聞いたんです」
「は?」
淀みなく答えられた鈴の言葉に、みきほが頭にハテナマークでも浮かんでそうな表情を浮かべた。
「せやから大神くんですよ。大神 義之くん。みきほさんの幼馴染みやろ?」
「幼馴染みって……あたし、そんなヤツ知らないよ? 誰、大神って」
訳が分からないという様子で紡がれたみきほの言葉に、鈴が凍りつく。
「そ、そうなんですか。ウチら、用事があるんで、これにて失礼させてもらいますわ」
震える唇で下手な言い訳をしながら、鈴は黒斗と玲二を連れて病室を出ていった。
