みきほの病室から出たみどりは、ハイヒールをカツカツと鳴らしながら早足で廊下を歩く。
「確かこの先だよね、みきほさんの病室」
前方から歩いてきた3人組の学生が娘の名を口にしたのを聞き、みどりは足を止めた。
眉間に寄せていたシワを戻し、いかにも愛想の良い笑顔を浮かべて声をかける。
「貴方達、みきほの友達?」
「えっ! は、はい、そーですけど…」
いきなり声をかけられ、玲二が驚きつつも答えると、みどりは両手を合わせて喜ぶような仕草をする。
「まあ、貴方達だったのね! みきほが言っていた子達は!」
「……もしかして、みきほさんのお母さん?」
鈴の言葉にみどりは頷いた。
「ええ、はじめまして。いつも娘がお世話になってます」
「いえいえ! こちらこそ、毎日家におしかけてすんまへん!」
頭を下げるみどりに、鈴も頭を下げる。
「……風祭、階段から落ちたと聞いたんだが」
「そうなのよ…昨夜、コンビニに行くって出掛けたはいいけど、足を踏み外しちゃったらしいのよ」
「うわ……痛そう……みきほさん、大変だなあ……」
平然と嘘をつくみどりだが、鈴と玲二はそれを信じて疑わない。
ただ1人、黒斗だけは眉を寄せてみどりを見つめる。
「本当に?」
「は?」
「本当に階段を踏み外したのか? ……誰かに突き落とされたとか……その可能性は?」
疑いの視線を向けてくる黒斗の視線に、みどりは居心地が悪そうに顔を背ける。
「そ、そうよ。他に誰も居なかったし、私が見てたんだから間違いないわ」
「…………」
「…私、忙しいから。じゃあ、みきほを宜しくね」
逃げるようにみどりは、そそくさと立ち去って行った。
「クロちゃん、何であんな変なこと言うんや?」
「……別に」
さっさと歩きだす黒斗。
それを鈴と玲二は疑問の表情を浮かべながら着いていった。
