「昨夜、階段を踏み外してケガしたらしいんだよ。命に別状は無いけど片腕を骨折、片足を捻挫したって」
「そ、そうなんか……命あって何よりやったけど、みきほさん、とんだ災難やな……大丈夫やろか……」
心配そうに呟く鈴。
そんな彼女を大神は鼻で笑うが、鈴は気づいていない。
そのまま大神は何事も無かったように言葉を続ける。
「それで僕、みきほの見舞いに行こうかと思ったんだけど、どうしても外せない急用が入ってさ。だから変わりに橘達に見舞いに行ってほしいんだ。その方がみきほも喜ぶだろうし」
「なるほど…分かったわ! みきほさんの見舞いはウチらに任せてや!」
張り切った様子で言い切った鈴に、大神は満足そうに頷く。
「ありがとう。みきほは赤羽病院に入院してるから、宜しく」
「了解や!」
笑顔で敬礼ポーズをとり、鈴は早足で教室を出ていった。
「……ほんと純粋だな橘は。愚かなほどに」
ポツリと呟かれた大神の言葉は、教室内の喧騒(けんそう)にかき消されるのだった。
