(……可愛そうなママ。毎日のように理不尽な暴力を受けて、それでもあたしの為に頑張って耐えていた)
またも画面が切り替わり、今度は一志が踞って泣いているみきほの頭を思いきり蹴飛ばしている光景が映った。
『このクソガキが! 首を切って殺したろうか!!』
『子供にまで暴力を振るわないでよっ!!』
みどりが止めようとするが、逆に殴られてしまった。
(この時は、あたしの目付きが悪いとか言って、なぐってきたんだっけ)
画面が切り替わると、やはり泣いているみどりとみきほが寄り添い合う場面になった。
『ママ……もぉ、やだよ……パパなんか嫌い、怖い。死んじゃえばいいのに』
『でも、みきほ。貴方の実のお父さんなのよ?』
『知らないよ! あたしはママだけが居ればいいの、ママと2人がいいの!』
『みきほ……ママも同じよ。いつか家を出て、“2人”で幸せになろうね』
「ウソつき」
ぼんやりと目の前の光景を眺めていたみきほの後ろから、恨みがこもったような声が聞こえて振り向く。
そこに居たのは、ドクロの仮面を付けた幼い少女。
みきほは、聞こえた声から幼い頃の自分であることに気づく。
「この頃は、あたしもママもお互いが生きる糧(かて)だった。あたしが一番大切なのはママで、ママが一番大切なのは、あたしだった」
「……やめてよ」
顔を背けるが、幼いみきほは続ける。
「でも今は違う。ママが一番大切なのは、あたしじゃなくなった。ママが一番大切なのは自分。幸せなのもママ1人だけ」
「やめてってば!」
しゃがみこんで耳を塞ぐが、彼女の声はそれを突き抜けて聞こえてくる。
「ママ寂しいよ。昔みたいに遊んでくれなくてもいい。楽しく話をしたい、一緒にいてほしい、あたしにはママしかいないの。どうして分かってくれないの? 寂しい、寂しい、寂しい。…………憎い」
最後に発せられた冷たい声を聞いた瞬間、みきほの意識は途切れた。
