「……ここ、どこ?」
気がついたら、みきほは真っ黒な空間で佇んでいた。
先ほどまで自分が何をしていたのか、何処に居たのか全く思い出せず、どうすればいいのかと途方に暮れる。
「……あれ?」
ふと、辺りを見回すと遠くの方に小さな光が見えた。
反射的にみきほは光に向かって駆け出す。
みきほが光のもとに辿り着き、それにソッと触れるとまばゆい光がみきほを包み込んだ。
とっさに目を閉じたみきほが目をゆっくりと開けると、そこは見覚えのある部屋だった。
みきほにとって、忌々(いまいま)しい記憶しか無い家……。
『何だこの異常者があ!! お前、今警察呼んだるから待っとけや!!』
2度と聞くことは無いと思っていた怒鳴り声が聞こえ、みきほの肩が強張った。
ゆっくりと振り返ると、そこには涙で顔をグチャグチャにした母・みどりと、真っ赤な顔で怒鳴り散らしながら携帯を振り回す父・一志(ひとし)の姿があった。
『やめてよ!! 貴方、警察にカニチャーハンで喧嘩しましたなんて言うつもりなの!?』
泣き叫びながら、みどりが一志の携帯を奪い取ろうと手を伸ばすが、上手いことかわされていく。
(ああ……この時は、アイツがママの作ったご飯に文句つけて、喧嘩になったんだっけ)
過去の記憶を思い出し、遠い目をするみきほ。
『いい加減にしてよお!!』
ガシャッ
みどりの絶叫と共に、一志の持っていた携帯が床に叩き落とされる。
『ゴラアアア!! 壊れるだろうがああ!!』
携帯を落としたことによって一志の逆鱗(げきりん)に触れ、みどりは一方的に殴られた。
腹や背中など、服に隠れて見えない所を狙っていく。
しばらくすると目の前の画面が切り替わり、みきほの部屋になった。
部屋の中では、泣いているみどりとみきほが寄り添いあっている。
『ねえ、みきほ。ママおかしいの? 間違ってるの?』
『ママおかしくなんかない』
まだ中学生だった時のみきほが首を振りながら言う。
『ママ、ね。パパなんかどうでもいいの、みきほだけで良いの……』
そう言いながら、みどりが優しくみきほを抱きしめた。
