「ウチかて、最初おかんに習ってる時は相当やったで」
「鈴は、お母さんに料理教えてもらったの?」
「はい! 手取り足取り教えてもらいました!」
手取り足取り教えてもらった割に料理のみてくれが悪すぎる……という言葉が黒斗の脳裏に過ったが、話が脱線しそうなので黙っておく。
「鈴のお母さん、どんな人?」
「ちょっといい加減でボケっとしとる所あるけど、家庭的で料理がめっちゃ上手いで! 女手1つでウチを育ててくれたし、料理とかたくさん教えられたんや」
「そう…なんだ。いいお母さんだね」
みきほは言いながら、自分の母親のことを思う。
(あたしは、ママに料理教えてもらえなかったな)
仕方ないとは分かっている。
ほんの3年前までは、自分達親子は特殊な暮らしをしてきたし、毎日が必死だったから、料理を教えてもらう余裕も暇も無かった。
だけど
(やっぱり寂しく思うのは、あたしのワガママだよね)
自嘲(じちょう)するようにみきほは笑うと、考えることを辞めて、目の前のニンジンに意識を集中させた。
