「ギャー! 指切ったあああ!」
またも聞こえてきた玲二の悲鳴に、本日何度目かの溜め息を吐く黒斗。
「クロちゃん! ウチ、今は手ぇ離せへんから頼むわ!」
みきほに付きっきりの鈴から指示を受けた黒斗は、牛肉を切る手を止めて玲二のもとに向かう。
「兄貴、血が出た! 血ーがー出ーたーよー!!」
ギャアギャアと騒ぐ玲二の人差し指を見るが、出血というより、血が滲んでいる程度である。
この程度のケガで自分の作業を中断させられた黒斗は、苛立ちを露に玲二をギロリと睨みつける。
「大げさに騒ぐな。こんなもの傷口を洗って絆創膏(ばんそうこう)でも付けときゃ治る。いちいち作業を止められる俺の身になってみろ」
冷ややかで、とてつもない威圧感を醸し出しながら言う黒斗に、玲二はすくみ、「すんません!!」と謝りながら絆創膏を取りに行った。
それを見送った黒斗は、鈴とみきほの様子をコッソリと伺う。
「こ、これで良い?」
「あきまへん! 包丁を使う時は、こっちの手を猫手にせえへんと危ないですよ!」
不慣れな包丁を使うみきほに、親身となってレクチャーする鈴。
作業を始めて、1時間近くは経とうとしているが、こんな調子なので未だに材料を包丁で切る作業が続いている。
完成にはまだまだ時間がかかるだろう。
「こ、これでどうよ!」
気合いを入れながら、みきほがニンジンを切る。
しかし、その形は小さく歪(いびつ)だ。
「はあ……上手くいかないな」
「大丈夫。最初は誰でも、そんなもんや!」
しょんぼりするみきほに、鈴がグッと拳を握りながら元気つけるように言った。
