見た目が最悪のナポリタンを、みきほが口に含むと、黒斗と玲二が心配そうに見つめる。
「…………」
何とも言えない微妙な表情を浮かべながら、みきほはベチャベチャのナポリタンスパゲティを咀嚼(そしゃく)し、そして飲み込んだ。
「………………見た目によらず、美味しい……」
予想外の感想に玲二は驚愕(きょうがく)し、鈴は満面の笑みを浮かべた。
「えっ、えっ? 本当に!?」
「うん。一口食べてみたら?」
みきほにフォークを渡された玲二が、ほんの一口だけナポリタンを試食した。
「……美味しいっ!! 何コレ美味しすぎるよ! トマトソースの味付けが絶妙で、更にこのスープのお陰で麺に味が染み込んでる!」
「せやろ! ウチの自信作、鈴スペシャルやで!」
腰に両手を当ててドヤ顔で言う鈴。
その間にも、みきほは次から次へとナポリタンを口に運んでいき、やがて完食した。
「美味しかったー! こんなに美味しいナポリタン、生まれて初めて!」
食事を終え、満足したみきほが笑顔を浮かべながら言った。
「へえ。仏頂面(ぶっちょうづら)ばかりだと思ってたが、ちゃんと笑えるじゃないか」
「あっ……う、うっさい!」
ニヤニヤ笑っている黒斗の言葉に、みきほが頬を赤く染めながら悪態をつく。
「……まあ、美味しかったのは事実だし。その……ありがとう」
「どういたしましてや。喜んでもらえてウチも嬉しいわ!」
照れ隠しに顔を背けながら礼を言うみきほに、鈴が笑顔で答えた。
「……あたしより年下なのに料理が上手って凄いよね……尊敬するかも」
「そんなに料理って難しいもんちゃうで? 慣れれば簡単や! みきほさんにも、直ぐに出来るようなるで!」
「無理だよ……だってあたし、包丁だって握ったことないし。料理なんか、米を握っておむすびにするか、フライパンで焼いてるホットケーキを引っくり返すぐらいしか出来ない」
「……それって“料理”に含まれるのか?」
思わず疑問を口にする黒斗だったが、みきほが無言で凄まじい殺気を含んだ眼差しを向けてくる為、それ以上何も言わずに進展を待つ。
