一方、その頃
赤羽病院の屋上で1人、空を仰ぎ見る有理の姿があった。
左腕は付け根から無くなっており、右手首の先っぽには包帯が巻かれている。
「…………」
掌が無い右手首を見ながら、有理は数分前の出来事を回想する。
「有理、洋介くんがお見舞いに来てるわよ…?」
「…………」
病室の入り口から、遠慮がちに有理の母親が声をかけるがベッドの上で横たわる息子はそっぽを向いたままだ。
「ねえ、有理……」
「……うっせえな、帰らせろよ!! 今は誰とも話したくない!!」
「わ、分かったわ」
怒鳴りつけてきた有理に驚きつつ、母親は病室を出て、外で待っている洋介に話をしに行った。
(……俺の腕…俺の夢…俺の…才能……)
左腕と右手と共に、画家になる夢を失った有理は、ボンヤリと窓の外を見つめた。
死んだ魚のような目には外の風景など写っておらず、焦点も定まらない。
「有理」
扉を開けて、母親が戻ってきた。
