放課後


 手早く帰り支度を済ませた鈴は、直ぐ様黒斗に声をかけた。


「クロちゃん、行こか」

「ああ」



 その様子を見ていた周囲の同級生がすかさず冷やかしだす。


「ヒューヒュー! まーたネクラと橘がデートだデート!」

「橘ぁ、お前もネクラの何処がいいんだよお」


 ちなみに“ネクラ”とは黒斗の蔑称(べっしょう)である。

 真っ黒な髪と、若干暗い性格(本人はクールと言い張っている)から付けられた。



「うっさい! デートやないって何度言えばわかるんやー!」

 鈴が拳を振り上げて否定するが、同級生達はニヤニヤ笑ったままである。



「放っておけ。好きに言わせとけばいいだろ」

「クロちゃんがそんなやから、つけあがるんやで……全く」


 ぶつぶつ不満を呟きながら、鈴は黒斗と共に恵太郎が入院している赤羽病院へと向かった。