有理は幼い頃から絵が上手だった。
とても幼児が描いたとは思えない程、綺麗で丁寧な絵を描いていた。
そんな有理を見た、両親をはじめとする大人達は口々に「天才」、「才能がある」と褒め称えた。
だから有理自身も、自分は絵の天才だと信じて疑わなかった。
洋介と玲二に出会うまでは。
最初は本当に仲が良い友達だった。
互いに競い、認めあえる良きライバルだった。
だが時が流れるにつれ、有理と洋介・玲二には大きな差が開いてきたのだ。
有理には確かに才能があったが、洋介と玲二には、有理以上に才能があった。
絵画教室に通うまでは絶賛されていた有理の絵は、いつも2人の絵と比較されて下に見られることが多くなり、この頃から有理は親友2人に強い憎悪と嫉妬を抱きはじめる。
そんな彼に、更なる追いうちがかかる。
玲二が絵画教室の講師から、コンクールに参加することを薦められたのだ。
―どうして俺よりも、お前らが評価されるんだ
―俺は天才なんだ、お前らよりも上にいるべきなんだ
天才である自分ではなく、玲二が推薦されたことで有理の中の何かがはじけた。
―玲二と洋介は邪魔だ。
―コイツらが消えれば、また俺は天才として注目される。
芽生えた殺意を抑えることは出来ず、有理は玲二の殺害に及んだ。
運良く玲二が生き残ったことは計算外だったが、気弱な彼の心につけいり、脅しをかけて従わせたのだ。
