その様子をジッと見ていた鈴が、黒斗の後ろの席から声をかける。



「なーんか無愛想なやっちゃなあ。クロちゃんよりもネクラな人がこのクラスに来るとは思わんかったわ」

「誰がネクラだ。俺は暗いんじゃない、クールなんだ」

「コラー!!」

 怒声と共に黒斗の額へと白いチョークが投げつけられる。



「いでっ!」

「ホームルーム中にお喋りは禁止だと何度も言ってるでしょーが! ホラ、大神くんも何処でもいいからさっさと空いた席に座りなさい!」

 少々短気で怒りっぽい佐々木は態度の悪い転校生と、私語をつつしまない黒斗に完全にご立腹のようであり、不機嫌を隠すことなく大神へ着席を命じた。



「…………」


 これまた無言のまま大神は窓際の一番後ろを目指して歩みを進める。



 途中 黒斗の席の横をすれ違った際、大神は殺気のこもった瞳で彼を睨みつけた。



「……君の目も赤いんだ。お揃いだね」

「えっ?」

 呟かれた言葉に黒斗が反応し、顔を上げると同時に目と目が合う。

 だが大神は何事も無かったように彼から目を逸らすと、空席へと向かっていった。


 その様子を無表情のまま目で追う黒斗だが、心が何故か ざわざわとして落ち着かない。



(………人のことを言えないが……見ていて気分の悪くなる目だな……)


 どろりとした血のように赤い大神の目に、黒斗は生理的嫌悪を覚えた。



「……どないしたん? そんな険しい顔して」

「……何でもない……」

 胸焼けしたようにムカムカする感覚を堪え、黒斗もまた、何事も無かったように前を向き直した。