「……用事はそれだけなの? ちゃんとオレは約束を守ってるよ」
震える足を叱咤(しった)しながら、自分より身長の高い有理を上目遣いで見つめる。
「いや、それはただの確認だよ。用事は別にある。お前に頼みがあるんだ」
有理はそう言うと、玲二の耳元に顔を近付けた。
「実は……洋介を殺してほしいんだ」
「は?」
―言われた言葉の意味が分からない。
―ワカラナイ。
「……冗談……だよね?」
軽い口調で言おうとしたが、震える唇から絞り出されたのは弱々しく頼りない声。
「冗談なんかじゃない。本気で洋介を殺せと言ってる」
氷のように冷たい有理の眼を見た玲二の全身から、血の気がサーッと引いていった。
「何で、何でだよ!? 洋介は親友だろ!? 何で殺さなくちゃいけないんだよ!!」
驚きのあまり声を荒げる玲二だが、有理は無表情のままだ。
「あのさ……お前は俺に刺された理由を分かってんの?」
「そんなの分かる訳ないだろ! ただ……オレのことが嫌いになったのかな、とか…怒らせるようなことしたかな、とか思ってたけど……」
「相変わらず頭が足りない奴だな! そんなことで、いちいち刺し殺そうとするかよ!」
玲二の言葉を、有理は鼻で笑い飛ばした。
「じゃあ……何でオレを……」
有理が何を考えてるか分からず、混乱している玲二の眼から涙が一筋流れ落ちる。
そんな玲二の胸ぐらを有理は乱暴に掴み、怒鳴りつけた。
「分かんねえなら教えてやるよ! 玲二、お前が俺よりも上に行ったからだ!!」
「う、上……?」
「お前ら2人は俺の引き立て役だった! それなのに、お前らの方が俺よりも絵が上手くて、皆に注目されている!! それが許せなかったんだよ!!」
