如月高校(きさらぎこうこう)2年A組 教室内



「はい、皆さん静かにー!」

 ざわめく教室内にウェーブのかかった、腰まで届く髪が特徴的な担任教師の佐々木(ささき)のぞみが入ってきて、生徒達に静粛(せいしゅく)を促した。

 教師の言葉通り、生徒達は朝礼を行い、席につく。



「今日は転校生を紹介します。さ、入りなさい」

 佐々木が扉の方を見やると、ガラガラと音をたてながら1人の男子生徒が入ってきた。


 姿を現したのは、茶色い髪を無造作に伸ばした少年。

 端正な顔立ちに赤い瞳が特徴的だ。

 生徒達も珍しい赤目に興味を示しているようで、ハーフなのだろうか等と小声で会話を している。


 一方 注目の的となっている少年は、特に緊張した様子もなく、無表情で教室内を見渡している。



「さあ自己紹介しなさい」

 佐々木が挨拶を促すが、彼は無言のまま立ち尽くしているだけだ。


「ちょっと、聞いてるの? クラスの皆に自己紹介しなさい」


「…………大神 義之(おおがみ よしゆき)」

「……はい、転校生の大神くんです。皆さん、宜しくしてあげて」


 ようやく口を開いたかと思えば名乗っただけの生徒に、佐々木は投げやりな様子で紹介を終わらせた。