恋も仕事も順調に進んでいたある日。
私は仕事の帰りで、電車に乗りながら音楽を聴いていた。
「ピコンッ」
音楽がプツリと切れてラインの着信音が鳴る。
『リクかな?』
そう思って画面を開いた私の動きが止まった。
【加藤秋】
『な んで...?』
どんどん心拍数が上がっていく。
ほんの少し震える指で画面をタップすると、
「スミレ、俺どうしたらいい?」
『アキ...
何があったの?』
封印していたはずのアキへの想いが、またどんどん膨らんでいく。
「どうした?
何かあった?」
「電話したい。」
戸惑いと嬉しさの感情がごちゃ混ぜになった。
家の最寄りの駅に降りて、すぐにアキに電話をかけた。
「もしもし
アキ?」
「もしもし」
「大丈夫?
何かあった?」
アキの声がすごく暗くて細いのが電話でも分かった。
「彼女が浮気してた...」
声も出なかった
衝撃過ぎて道の真ん中で立ち止まってしまった。
「スミレ?」
アキの声でハッとすると慌てて歩き出した。
「なんで?
なんで浮気だと思うの?」
「最近仕事が忙しくて、なかなか会えなかったんだ...
で、なんだか最近様子がおかしいと思って、彼女には本当に悪いって思ってたけど、携帯をみたんだ。
そしたら、男と2ショットの写真とか、また家に来いよとか連絡が来てて...」
「他の友達と一緒にその人の家に行って、たまたま2人で写真を撮ったとかじゃなくて?」
「俺もそう思って彼女に確認したら、泣いて謝りだしたんだ...」
「 え...?」
「最近アキと全然会えなくて、寂しくて、だからって。」
「 は?
なに?それ...。
寂しかったから?
それだけで?」
私にとってありえなかった。
私が今していることも、浮気になってしまうのかもしれない。
リクに大切に思われていながら、アキに対する気持ちが消えていないんだから。
でも、
でも!
アキに、私がこの人に好きって思ってもらえたらあとは何も要らないってくらい大好きなアキに想われている人が、
アキを裏切るなんて、傷つけるなんて...。
「アキはどうするの?
その人とは別れるの?」
「俺さ、好きなんだ。
彼女ももうしないって言ってるし。
でも1人で抱えるのは無理で。
相談出来るのスミレしかいないし...
いきなりこんな話してごめんな?」
「そっか...
アキがまだ好きなんだったら、私はアキの気持ちを尊重する。
いつでも話ぐらいは聞けるから。
私のことを頼ってくれて嬉しいよ?」
「ありがとな。
また連絡するかもしれないけど...
仕事はどう?」
「すごく楽しいよ。
先輩達も凄くいい人だし
アキは?」
「毎日立ちっぱなしでクタクタだよ。笑
スミレは彼氏、出来たか?」
「うん」
「そっか...
大事にしてもらえよ?」
「...
ありがとう。」
「じゃあまたな。」
「バイバイ」
別れてしまえばいい。
私だったらアキを苦しめるようなことをしない。
そう思った時にリクの顔を思い出して辛くなった。
私だってリクに大切にしてもらってるのに...
なんで
なんでアキへの気持ちは無くならないの?
なんでリクの事をアキのように好きになれないの?
その日私は眠れなかった。

