3月 まだ肌寒さが残るこの日、私たちは高校を卒業する。
校長先生が1人1人に卒業証書を渡していく。
「加藤秋」
「はい」
少し低くなったアキの声だけが体育館に響いた。
アキと別れて、私の気持ちは消えること無く、日に日に大きくなっている。
何度忘れようと思っても消えることは無かった。
アキはあれからあの女の子と付き合うことになった。
今でもすごくラブラブみたい。
アキの事を嫌いになった方が楽になれるんじゃないかと思って、アキの嫌いなところを考えた。
考えて考えて考えて...
出てこなかった...
アキの良いところ、笑顔、匂い、声。
好きな所しか出てこなかった。
でも、そろそろ前に進まなきゃ。
そんな事をアキの後ろ姿を目で追いながら考えていると、式はあっとゆう間に終わった。
「もう高校卒業しちゃったんだね」
「またいっぱい会おう!」
「この後、ピアス開けに行くんだったっけ?」
「また大学でもよろしくね。」
式を終えた私たちは教室で友達との別れを惜しんでいた。
「スミレ」
「卒業おめでとう。
アキ。」
「スミレもおめでとう。
あのさ、これ書いてくんない?」
私に差し出されたのは卒業アルバムだった。
「いいよ^ ^
私のにも書いてね」
『なんて書こう...
ただメッセージを書くだけなのに緊張する。』
「スミレも就職だっけ?」
「そうだよ。
アキは理容師だったよね?」
「おう。
お互い大変だと思うけど、頑張ろうな!」
「うん。
はい、書けた。」
「サンキュー。
じゃあまたな。」
「バイバイ。」
『“またな”この言葉が私にとってどれほど嬉しいものか、あなたには分かりますか?
私とあなたの繋がりが、ここで切れることがない気がしてすごく嬉しかった。
また、会えるといいな...』

