「はっ…!上等。変な女だなお前…出ていってもらおうか、と言いたい所だが今日はクッキーで見逃してやろう」

「…へ?」
思わぬ返事に理緒は素頓狂な声をあげた。





「だから、お前の持ってるそのクッキーで許してやるって言ってんだ。早くよこせ」

「は、はあ…」


理緒は困惑しながらも作ったクッキーを翼に渡す。



「…」

「あ、あの…どうですか?」

「……ふん、美味いんじゃねえの?」

「や、やった…!」




翼はその後クッキーを完食した。

「甘いもの、好きなんですか?」

「わっ、悪いかよ…!」

柄にもなく赤くなった翼に理緒は思わず吹き出した。

「なっ、お前笑ったな?」

「ち、違いますよ…笑ってません…!…ぷ、ただ…都筑先輩がっ…」

「…お前、俺の事知ってんのか?」


「当たり前じゃないですか、先輩は色んな意味で有名ですからね」

「…お前、名前は?」


不意に真剣な表情になった翼に内心、ドキッとする理緒。

「理緒…藤沢理緒です。」

「そうか、じゃ俺もう行くわ。…明日もこの時間クッキー作ってこいよ」

「え!?」

「じゃあな、













ご馳走さん、理緒」

翼はそう言って理緒の頭をくしゃっと撫でると、鞄を背負って屋上を出ていった。




「……ええ!?」