【sideひな】

今日は日曜日。
天気も晴れていて最高の日。
だから、ちょっと遠出しようと思ったの。
ほんの、ちょっと。
…だけど。

「ここ、どこ??」

電車に乗ってすこ〜し寝て起きたら、まったく知らない土地へ来てしまった。
そんなに寝てた記憶はないから、まだ県外ではないはず…。

「とりあえず、フラフラしてみよ!」

考えても何も浮かんでこないから、とりあえず歩こうと思って、足を一歩動かした瞬間。

グイッ

「ねぇねぇ、きみ可愛いね」

可愛いなんてありえない言葉と一緒に
腕をひっぱられた。

「あの…何ですか??」

おそるおそる上を見上げると、いかにもチャラ男そうな男の人がわたしを見ていた。

「俺さぁ、道案内してあげよっか?」

「え?」

「だってさぁ、さっきから見てたらすごいキョロキョロしてるし」

知らない人にはついて行くなって小学生の時に習ったけど…
このままじゃ家にたどりつけなくなるかもだし。
この人いい人そうだし、いっか!

「あの、じゃあお願いしていいですか?」

「もちろん!」
男の人は爽やかな笑顔を見せてそう言った。

‥‥なんだ、いい人そうじゃんか。

馬鹿なわたしは油断していた。
この人がチャラ男っぽいってこともすっかり忘れてしまっていた。

‥‥あれ?
10分ほど男の人と一緒に歩いてると、人が少なくなってきた。
‥‥なんか、こわい。
今更思ったってしょうがないのに、どんどん人が少なくなっていって、恐怖を覚え始めた。

「あの‥‥ここ、どこなんですか?」

そういえば、道案内するとか言ってたけどどこに行くのか知ってるのかな‥‥?

「‥‥ぷはっ!!」

そんなことを思っていると、男の人が急に笑い始めた。
‥‥え、わたし何かしちゃったかな?

「あの、どうしたんですか?」

「‥‥馬鹿だね、俺がほんとに道案内するとでも思った?」

さっきまでの爽やかな笑顔はどこにもなくて‥‥。
何かを企んでいるような、そんな笑顔。

「‥‥いいことするために決まってるじゃん?」

怖い‥‥。
いいことっていっていいことじゃないことなんか、すぐに分かる。

「わたしっ‥‥帰ります」

「帰るってどこに?迷ってるんでしょ?」

とっさに逃げようとしたわたしを、逃がさないとでも言うかのように前に立ち塞がってくる。
‥‥どうしよう、逃げられない。

「ねぇ‥‥俺といいことしよ?」

「やっ‥‥帰る!」

「チッ‥‥」
必死に抵抗を続けるわたしに男の人は舌打ちをしたかと思うと‥‥

グイッ

‥‥え?

キス‥‥される?
目の前には、男の人のドアップ。
逃げようにも、逃がさないとでもいうようにガッシリと腕をつかまれてしまっている。

「ぃゃ‥‥」

わたしが振り絞った声は、蚊の鳴くような声で、誰もきづいてなんかくれない。

‥‥もう、だめだ。

そう諦めかけた時‥‥

「ねぇ、その子嫌がってるっしょ」

わたしが驚いて後ろを振り返ると、

「ぁ‥‥」