朋ちゃんと僕と、O中のみんな



その時のECの落胆した顔を,今も鮮明に思い出す事が出来る。
オンナって不可解だよな。

ECがともだちだったら、そう言って慰めたろう。
でも,僕はそんな気の利いた事を言える程、この時はオトナじゃなかったから
ただ,黙ってECの顔を見ていただけだった。



ECは、「ま,『嫌い』ってのはポーズさ、最初の」なんて
独り言みたいに虚勢を張って、力なく廊下を歩いていった。




....僕は、昼間の朋ちゃんのことを思い出した。


バスの中で,僕の学帽を返して、と言ったら
朋ちゃんは「これ,お守り。これ被ってれば..。」


ECが来ても,守ってくれそう。


そう言ってにこにこ笑ってた。


でも。



「コーズが見てて誤解するぞ」

と、僕が言うと、なんだか表情を曇らせて



「そんなコト、今....。」


考えたくない、とでも言おうとしたのだろうか?


今となっては判らないが、つまらなそうに
僕に学帽を返した。

その後は、皆がバスに入ってきて
いつもの朋ちゃんの顔に戻ったのだけど.....


どことなく、刹那的、と、言うとヘンだけど
行き当たりばったりの、どうでもいいの、とでも言いそうな感じの
朋ちゃん、どこか、投げやりな感じもする。


そんな朋ちゃんの軽さは、なんか、気になった。


...そう、あの、飛び降りたクボの感じにすこしだけ
近いところがあったんだ。






回想している僕の耳もとに、遠く,泣き叫ぶような
4ストローク4気筒のサウンドが聞こえてきた。

街路を飛ばしてゆく。


..あの音は。



友人の兄貴,医者の息子が持っていた
MVアグスタ750SSの音にそっくりだった。

同じDOHC4気筒でも、GPレーサーそっくりの音は
流石,本物だった。


ずっと後に、免許を取ってから乗せてもらった
「本物」は、すごく乗りやすくて驚いたけれど
音は、この時聞いた音そのものだった。



だから僕は、MVというと
ちょっと危うい雰囲気の朋ちゃんのことを思い出す、んだ。