「逃げるんじゃない。」

カバンを掴まれた。

カバンを置いてでも逃げようとした俺の手首を掴み、エネゴリ君は俺の頭を見た。

「ワックス、禁止だと言っているな⁇

前回 注意した時に、次回 ワックスを使っていたら ワックスを使わなくてもいい髪型にする……って言っていたな⁇

北見、付いて来い。」

そう言って、エネゴリ君は俺の手首を引っ張り 歩き出した。

「はぁ⁇俺だけとか、ないっすよ。
司もワックスつけてるし、コイツ ピアスも開けてるんっすよ⁇」

「森川も付いて来い。」

「……え。」

ただ呆然と立ち尽くしていた司は驚いた顔を見せた。

俺と司は顔を見合わせた。

「「とりあえず、逃げるぞ‼︎」」

2人同時に言い、俺等はさっきよりもスピードを上げて走った。

反応に遅れたエネゴリ君の姿は遠のいていって、クラブボックスに着く頃には エネゴリ君の姿は見えなくなっていた。

クラブボックスについて、急いで 着替えた。

クラブボックスの窓から、エネゴリ君が見えた。