あたしには好きな人がいる。


2年の先輩の番場 奏琉先輩。


バスケ部の期待の星と言われている。


そしてあたしは今、親友の篠村 楓と一緒に練習を見に体育館のギャラリーにきている。



「はぁ…奏琉先輩今日もかっこいい…」






高校に入学して部活動見学で見てまわっているとき、ちょうどバスケ部が試合をしていて奏琉先輩がシュートを決める時だった。





一瞬のことだった。






ボールがリングの中に吸い込まれるように入っていったのだ。




素人のあたしから見てもわかるくらいきれいなフォームで目を逸らすことができなかった…




それから毎日こーやって練習を見にきている。


「まぁかっこいいけど、よくも毎日きてて飽きないよね」


なんて言いながらも楓、先輩のことみてるし。


なんだかんだ言ってるけど、やっぱりイケメンはいいよね。



「キャー!!!!奏琉先輩ー!」



「頑張って下さーい!」



聞こえるてきたのは、あたし達以外にも集まっている奏琉先輩ファンの方々の応援の声。



そう、奏琉先輩はこの学校のアイドル的存在なのだ。



身長は180cmもあり、細身なのに筋肉もほどよくついていて、それに何より顔がハンパなく整っている。


切れ長の目にくっきり二重、すっとした鼻筋、一見クールなんだけど笑うと右のほほにえくぼができてかわいい。


そこらへんにいる男子とは格が違う。



「だってかっこいいんだもーん」



楓は少々呆れ顔で視線をコートに戻した。



ダンダンダン。



ボールが床と手を行き来している。


今は、ミニゲームの真っ最中。


ボールを手にしているのは、奏琉先輩。


ゴールのリングまでは少し距離がある。


しかも前には3年の先輩が3人いる。



しかし次の瞬間、ボールを自分の体の1部よように自在に操り、その3人の先輩を流れるように軽々と交わした。


そして、キュッとバッシュの床に擦れる音が聞こえた。


先輩はシュート態勢になり、あっという間に華麗な弧を描きボールはリングに入った。


体育館には応援にきていたたくさんの女の子達の歓声が響いた。




ピッーーーーーー。




体育館に響いたホイッスル。


それでちょうど今日の練習は終わった。





「……よ!小夜ー!帰るよー!」




あたしは、はっとして我に返った。




片付けを終え、バスケ部員とたわむれている先輩に見とれていたら時間を忘れてしまっていた。


さっきまでたくさんいたギャラリーにはあたしと楓の2人だけになっていた。


いつの間にかギャラリー入り口に楓が立っていた。


あたしは足元に置いていたスクバを肩に掛け、急いで楓のもとに行った。



「あっ!ちょっと待って!」



そー言ったあたしはスクバの中から小さな手鏡で自分の髪が乱れていないかチェックした。


これも、いつでも先輩に会っても大丈夫なようにと毎回している。



「…よしっ!OK!」



「そんなことしなくても大丈夫なのに」



楓があたしをみてクスクス笑う。



楓は誰からみても165cmのスタイル抜群の身長で今風のモデルさんみたいでかわいい。


スラッとしている華奢なその手足は色白で顔も小さく整った顔立ちだ。


あたしなんて、身長も152cmしかなくて、かおだって普通。


強いて言えば、高校入学と同時に染めた楓より少し暗いブラウンの腰までのびている髪が自慢。


中学からずっと仲良くて、お互いなんでも話せる仲なんだ。


中2のとき同じクラスになって、最初は少し話し掛けずらかったんだけど席が近くなったのがきっかけで仲良くなったの。


すごい頼れるし、頭もいいし。


あたしにとって、お姉さんみたいな感じ。


だからって、偉そうな態度もしないし、ちゃんとあたしのことを考えてダメな時には叱ってくれる。


本当に大事な存在。



「だって、先輩に会った時少しでもかわいいって思われたいもん!」



ほほをプクっと膨らますとそれを楓が両手でつぶすからぶぅっと変な音が出て大笑いをした。


階段を降りていき、時間を確認すると、5時半を回っていた。


もう日が長くなり、夕日があたし達を赤く染めている。


夏の訪れを感じさせる風が吹く。


ワクワク胸を踊らせながら、帰り道を他愛のない話をしながら歩いていった。