タカラモノ~小さな恋物語~




「なんかあん時、不思議な気分だった。」


「え?」


「いや、俺もももてぃも職場では普通に顔合わせてんのに、こうやって一歩外に出たら大学生だもんな。なんつぅーか、新鮮だった。」


「何それ、おかしなこと言うね。」


「いやいやマジで!」


一生懸命に話すケンに、私はクスクスと笑った。




「私はね、バイト無いと調子出ないなぁ…って思った。なんとなくね。」


「ふーん、ももてぃバイト好きだもんな。」


「うん、ケンは好きじゃない?」


「俺?うーん…時と場合によるな。」



時と場合ってなんだろう。


気になったけれど、ケンが聞かれたくないかもしれない、と思って聞くのをやめた。



「ねぇ、ケン?どうしたの、本当は何かあったんでしょ?」


「え、なんで?」


「だっておかしいよ。電話なんて。何かあったから私に電話したんでしょ?」


「……。」


「ケン?」


「やっぱ用事ねぇと電話しちゃまずかったか?」


「え、いや…本当に何もないの?」


「あぁ。なんとなくももてぃの声聞きたかっただけ。」


「え…」


ももてぃの声聞きたかっただけ…?


「あ、間違えた。ももてぃのアホそうで、ビービーギャーギャー言う声を聞き届けて寝ようかと思っただけ。」


「ちょっ…!!」


ゲラゲラ笑うケンの声がした。



「年上をからかうんじゃないの!」