タカラモノ~小さな恋物語~




この音は電話だ、珍しい…と思いながらも急いで手に取る。



私は画面を見て少し驚いた。


―――え、ケン…?


どうしたんだろう、電話なんて初めてだ。


一人暮らしだし、何かあったのかな?


不安がよぎった。



「…も、もしもし?」


「あ、ももてぃ?」


電話から聞こえるケンの声は、私の不安を簡単に払拭するような明るい声だった。



「どしたの…?」


「え、いや、特に用事はないんだけど。なんとなく、暇だったから。」


「は?」


私は思わず笑ってしまった。


「んーダメだった?」


「あ、いや…むしろありがたいかも。私、今やることなくて、暇すぎて干からびそうだったから。」


「はー、何だよそれ。つぅーかももてぃ、もう干からびてるだろ?」


「なっ…失礼な!そういうケンこそ、私に電話するくらいだもん、暇だったんでしょう?」


「まーなぁ、干からびてはねぇけど。」


電話越しで笑っているケンの声。


なんだか笑っちゃうけど、安定の声って感じ。



「今日ももてぃ、森林公園前のイタ飯屋いたっしょ?」


「えっうん、ケンもいたの?」


「いや、前の道通っただけ。俺、手振ったのにももてぃ全然気付いてくれねぇんだもん。連れに笑われたわ。」


「そ、そうなんだ…ごめん。」



森林公園はこの地域で一番大きな公園。


池や噴水、ウォーキングやサイクリングコース、遊具、大きな広場など、とにかく大きくて遊べる場所。


おまけにいくつか大学も密集している地域だから、人通りが多い。