「ケンが私のことは想っていないけれど…。
でも、宇野さんのおかげでこうして私も自分の気持ちに気付くことが出来たの。

私、まさか自分がこんな感情をケンに抱くだなんて夢にも思っていなかった。だからこそ、この気持ちを大切にしたいなって思うの。

きっと、こうやってケンのこと考える機会が無ければ気付かなかった、だから感謝しています。」



「飛鳥さん…」



宇野さんは、ありがとうございます、と声を震わせて言った。



「私、本当に馬鹿ですよね、何考えてるんだろう。恋って、盲目ですね。何も見えなくなってしまう。」


「うん、難しいね。」


「私が言うのも何ですけど…飛鳥さんは自信持って良いと思います!健吾くん見てれば一目瞭然です。」



私は小さく首を横に振って、クスッと笑った。



「ケンは私のことなんて何とも思ってないよ。ケンね、好きな人いるんだって…。

だからこれは叶わない恋なんだ。」



「え、それって……」



「私ね、あいつが大切な人と一緒になったとき、ちゃんと笑顔でいようって決めたの。

おめでとうって言えるように、好きな人だからこそ、そう願おうって。」



「……。」



「だから、私も宇野さんと同じ。ケンとそういう風にはなれないみたい。」



それを聞いて宇野さんは柔らかく笑った。



「飛鳥さん、本当に素敵な人ですね。」


「え?」


「謙虚で、驕らなくて、優しい。本当に心がきれい。」


「…?」



突然の宇野さんの発言に1人混乱をする私をよそに、宇野さんは「だからこそ、健吾くんは選んだんだろうなぁ。」と呟いた。