「私、飛鳥さんの存在が怖かった。」



「……。」



「初めてシュクレ・メゾンで健吾くんと飛鳥さんを見たときに、2人の雰囲気の良さに言葉を失いました。私の入る隙なんてどこにもないって…。むしろ健吾くんのあんなに楽しそうな顔、初めて見ました。

でも、それでもやっぱり健吾くんのこと諦めきれなくて…。

仕事上の営業スマイルってことは分かっていたけれど、お店に行けば健吾くんもちゃんと私のこと見てくれているような気がして…。」



「宇野さん…。」




今では宇野さんの気持ちが痛いほど分かる。



好きな人のこと、諦められないって…



「きっと飛鳥さんは優しい人なんだろうなってことは感じてました。きっと自分のことよりも人のことを考えて、優先させちゃうような素敵な人なんだろうなって。」



「そんな…」



「だから私、その飛鳥さんの綺麗な心を利用しました。

私が飛鳥さんに協力してほしいって言えば、きっと飛鳥さんは自分の気持ちに嘘をついて私に協力してくれるだろうなって…。

最低なのは私なんです、本当にごめんなさい。」



宇野さんはまた声を詰まらせた。



「何より飛鳥さんが1番健吾くんに近くて、きっと2人は想い合っているんだろうなって。私なんかにチャンスは無いことは分かっていたけれど、それでも…。」



「宇野さん、泣かないで?」



私はなだめるように笑った。