翌朝、体中に怠さを感じたが、それ以上に傷が、まだ傷んだ。
昨夜は今までにないほど苦しかった。
手足を縛られた状態じゃ、体をよじることもできないから、まともに胸が痛い。
胸の痛みと同時に体を動かすとお腹が痛む。
最悪、、、
近藤さんに言おうかな。
さすがの私でも、今回ばかりは危険な気がする。
その日の朝の回診には、鬼佐藤がやってきた。
「昨日は寝れたか?」
と聞かれ、本当は苦しくて眠れなかったけど、軽くうなずく。
「聴診するから、服を上げて。」
もう大丈夫だ。
慣れてきたんだと思う。
服を上げても怖くない。
胸に聴診器が当たる。
と、すぐに鬼佐藤の顔が険しくなる。
しばらくして黙って聴診器をしまった。
何?もしかして昨日の咳が原因かな?
次に傷の消毒。
消毒が当たると冷たいけど、消毒してから傷の痛みが少しだけやわらぐから、そこまで嫌じゃない。
「傷は早く回復してきてる。
いつまでも寝ていたらいけないから、今日から少しずつ歩くようにしなさい。
バンドは外すからな。
リハビリするときは、近藤さんに声をかけなさい。」
と言われ、近藤さんの方を見ると、近藤さんが笑顔になっている。
思わず私も笑顔になった。
「笑えるようになったな。」
と、言う鬼佐藤は、気のせいか、少し笑ってるようにみえる。
「ところで、発作は出てないか?」
と聞かれ、不意を打たれたが、私は鬼佐藤の声かけにはいつもうなずくだけなので、黙ってうなずいた。
「今日、部屋で検査するからな。
午後から、前いた大部屋に移るからな。」
といい、私の頭に手を置くと、部屋を出て行った。
今の、、、
優しすぎて怖い、、、
すると再び扉が開いたと思うと、また鬼佐藤が入ってきた。
「言い忘れたことがある。」
といい、椅子に座り、私の目をじっと見つめる。
何?また怒られるの?
と不安になっていると、
「この先のことだけど、もし今の高校のうちに退院できるなら、
行く先の施設はこの病院の隣にある『ひなたの丘』というところだ。」
と鬼佐藤が話した。
どんなところだろう。
その前に、私は退院できるのかな?
高校は卒業できないのかな。
「施設は18歳までしかいれないんだ。
だから、それまでに高校を卒業することができればいいんだが。」
絶対退院する!
高校行って、卒業する。
「た、、、退院したい、、、
で、、、す。」
というと鬼佐藤は心なしか明るくなった顔で、
「そうか。
高校に確認したんだが、休んでいてテストを受けてある程度の点数がとれれば、授業日数が少なくても卒業できるそうだ。
1年生、2年生で休まず学校に行っていたそうだな?
夏休みまでの単位も全てあるから、後はテストさえ受かればいいそうだ。
勉強はできる方だと聞いたが。」
ホントに!?
私、卒業できるんだ!
数日前、死のうって思っていた私だったのに、近藤さんと話をして、だいぶ気持ちが落ち着いて、今はそんなことを思わなくなってる。
こんなに浮き沈みが激しいのは、病気のせいなのかな、、、
「勉強は、
俺が教えるから。」
えっ?
「いやいや、大丈夫ですっ!
先生、、、お、、、忙しいですよね?」
いやいや、絶対スパルタでしょ。
「今、俺のこと、スパルタと思っただろ?」
図星、、、
「はい、、、」
「ハハ、もちろんスパルタだ!」
と怖いことをいいながら、笑顔の鬼佐藤。
初めてみた笑顔、余計に怖いわっ。
まぁ、でも一人で勉強なんて無理出し、
「よろ、、、しく、お願い、、、します。」
と言うと、またニカッと笑う。
だから、怖いから。
「それから、以前一緒に住んでた仲間も、ひなたの丘に今いるそうだ。
もし面会をしてもいいのなら、その子達に電話することもできるが、」
「しますっ!電話、します!」
やった、やった、やった!
皆とまた暮らせる!
やったぁ!
あっ、でも退院できないか、、、
「あの、私っていつ退院できるんですか?」
と思い切り聞いてみた。
「今は、その傷を治すことと、喘息を少し良くすること。それから、今後の生活で喘息が出ないように生活できるようにするために今は入院している。
だから、もっと喘息と向き合いなさい。」
と言うと再び私の頭に手をおき、部屋から出て行った。



