そのころ病院では
「佐藤先生!早川先生!
すいません!
回診前にかなちゃんの様子を見に行ったら、靴も上着も無くなっていました。
同じ部屋の子供たちに聞くと、朝方早くに出て行ったって。もしかしたら、外へ逃げたのかもしれません!
病院内は、全ての階、トイレの中まで探しましたが見当たりません。」
と近藤さんが慌てて医局に来た。
「わかりました。私と早川先生は、外を探します。
一度、彼女の学校に連絡して、行っていないか確認してください。私は、以前いた施設に一先ず向かいます。
他の先生方に伝えて、見つかったときの受け入れ体制をお願いしてください。」
と冷静さをなんとか保とうとしているが、早口で近藤さんに指示する佐藤先生。
早川先生と上着を羽織り、病院の車を手配し、救急バッグを手にして、医局を出た。
駐車場に着き、車を走らせると、早川先生が、
「こんな雨の中、まずいですね。雨に当たってないといいけど。」
「ああ」
と一言だけ答え、黙る佐藤先生。
こうなることを予想していなかった訳ではないが、ただ無事でいてほしいと胸に思い、佐藤先生は車を走らせた。



