~翌朝~
まだ怠いなぁ。
3日間も寝てたせいかな。
しょうがない。
ベッドから出られないのが苦痛でならない。
また歯磨きなんてしに行ったら怒られるんだろう。
退屈だなぁ。
何もすることがなく、ただボーッとしていたら、朝食が運ばれてきた。
出された食事はお粥のみ。
3日間、栄養は点滴だったから、胃に負担をかけないようにだそうだ。
看護師さんが教えてくれた。
食欲も湧かないけど、これを逃したらお腹が空きすぎてしまうようで、スプーンでお粥を口に入れてみた。
ゴクッ
、、、
うっ
痛い!
思わずお粥のみの入っていた食器に、胃から込み上げてきたお粥を戻してしまった。
ふー
ダメだ。
もうやめよう。
少ししたら近藤さんが見に来てくれた。
食欲が湧かないから、食べれなかったと伝え、痛む胃のことは黙っておいた。
だって、さらにベッドから解放されなくなっちゃう。
その後回診がきて、あの鬼佐藤がやってきた。
「おはよう。気分はどうだ?」
と聞かれる。
「だいぶ楽になりました。」
なんて答えたが、私の目をじっと見つめる鬼佐藤。
思わず怖くなって布団を急いでかぶってしまった。
「こら、回診中だぞ。」
とすぐに布団をはがされて、喉やら聴診、触診やら血圧体温の確認をしていた。
「まだ顔色が悪いな。食欲もないようだし。」
と言われ、焦って、
「いや、食欲があったんだけど、久しぶりだったから、なんだか食べにくくて、、、」
「ん?食欲はあったのか?
食べにくいって、胃が痛むか?」
と勝手に膝を曲げられ、胃を押されら。
「ここはどうだ?」
ん、押されては痛くない。
「大丈夫です。」
と答えると、
「食事は飲み込んだんだな?」
という問い掛けに、黙って頷く。
「だけど、戻した?」
図星だった私は黙って俯いた。
「胃が痛いんだろ?そういうことは近藤さんでもいいから、ちゃんと伝えなさい。
治るものも治らないぞ。」
私は、黙っていたが、いつまでも黙っていたって何も変わらないと思い、
「治らなくてもいいですよ。」
とポツリと言った。
すると、鬼が目の前の椅子に座り、
「いつまでもこのままか?ずっと病院にいるのか?」
と私の目を覗き込むように言う。
私は、俯いたまま
「うるさい、、、
私に戻るところなんてどこにもないんだから!
生きていたって何もならないんだから!
もう退院させてよ!」
あっ、、、たまっていたこと、全部吐き出してしまった。
すると鬼佐藤が立ち上がった。
私はぶたれると思って、怖くて目をつむった。
「そんなんじゃあ、退院は到底ありえないな。」
えっ?
と、目を開けて恐る恐る上を見る。
「そんな体で、そんな考えで、このまま退院できると思ったら大間違いだ。
もっと自覚しろ。自分の体が弱くなってることに気づいてるだろ?」
私は、何も言えず、俯いた。
「戻るところがくなってしまったからこそ、これから一人で生きられるように、まずは体を治して行かないことには何も始まらない。
次に外に出るときは、一人の社会人として出ていくかも知れないんだぞ。」
えっ?
どういうこと!
なんで?もうこんなのうんざりだよ!
「何それ、
高校には戻れないの?卒業できないの?
どんな思いをして、私が今まで学校に行ってきたと思ってるの?
毎日ね、帰ってくれば館長に体をボロボロにされて!
私が拒めば、私より幼い子供たちが犠牲になる!
食事だってまともにもらえなかった。
あれが、どんなにひどいことなのか。
裸にされて、写真撮られたこともある。
体中にタバコを押し付けられて、無理矢理吸わされて。
変な味の白い粉だって吸わされた!
ロープで縛り付けられて、一晩中立たされて。
棒で殴られて、無理矢理、
私の、、、、ヒッ、、、体に、、、入ってきて、、、
も、、、う、、、
私、、、、、汚いんだから。
ヒッ、
何年も毎日毎日犯されて、ヒッ
生理が来なくて、ヒッ、、、
知り合いに頼んで、お腹を殴ってもらって、何度も、
な、、、、ヒッ、、、、ん、、、ども、、、、
命を殺してき、、、た、、、、、
それなのに!
こんな私が生きていていいはずがないんだから!」
と、全てを言い放った。
気づくと、回診に一緒にきていた近藤さんが手を握ってくれていた。
けど私は、その手のぬくもりが、
すごく心苦しくて、
受け入れることができなくて、
勢いよく離し、
左腕に付いていた点滴を外していた。
黙って、鬼佐藤は、私が点滴台を倒すのを見ていた。
黙って、鬼佐藤は、
私が、布団をめくり、枕を投げつけるのを見ていた。
黙って、鬼佐藤は、
私が、棚にある服を、全部投げつけるのを見ていた。
、、、、
気づくと。部屋の中をくちゃくちゃにして、顔中もくちゃくちゃになってる。
頭もくちゃくちゃにかき、その場にしゃがんだ。
もう、何もかも消せない過去。
「私、汚れてる。」



