スコー
ピッ
スコー
ピッ
ん?
この匂い、
目を開けると口には何かつけられていた。
口を開けすぎて痛い。
手が思い。
なかなか動かない。
手がどこにあるのかすらわからない。
頭が動かない。
ここ、病院に来た日に私が横なってたところだよね?
カーテン開けたら、他にも患者さんがいるのかな。
あっ、手が動いた。
何かいっぱいつけてる。
ロボットか、
一人ツッコミして、笑ってしまう。
けど、口は塞がれてて笑えない。
その姿に笑える。
手で外そうとするけど、その度に喉が痛い。
どうなってるだろ。
と思いながら、口の周りのテープを剥がす。
ビリッ
痛い。
ビリッ
痛い。
貼りすぎでしょー。
ビリッ
剥がれたところで、口に入れられた筒状のものを引っ張った瞬間!
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あ、やっちゃった。
シャッ
カーテンが開く。
すごいけたたましい警報音と共に走ってきたのは、知らない看護師さん。
ヤバイ。
「あっ、かなちゃーん。
目が覚めたね。
今ね、呼吸がしやすいように先生に管を入れてもらってるから、外さないでね。
呼吸ができるようなら、先生にマスクに替えてもらおうね。
先生呼んでくるから、触らないでね。」
と言い終わり、私の剥がしたテープが丁寧につけられる。
すると開いたままのカーテンから、
息を切らした早川先生。
「ハァ、かなちゃん。フゥ、目が覚めたね。
良かったー。
脈を確認するね。
聴診もさせてね。」
なんて言いながら近づく。
指を挟んだ青い機械をはめなおし、どこか画面をみつめる、
テキパキと胸元を開けてむねの音を聞く。
私が嫌がることを知ってて、すこししか開けずに聴診器を当ててる。
この静かなのが嫌い。
「あーーーーーー」
と管でふさがれた口から言ってみる。
驚いた顔の早川先生。
すぐに笑顔になり、
「良かった、声が出せるくらい回復してるね。
胸の音も、肺の音も良くなってきてる。
もう3日も、目を覚まさずにいたんだよ。」
と言われ、少し驚いた。
でもずっと目を開けなければ良かったのに、と思う。
「覚えてる3日前の朝、僕と佐藤先生の前で、喘息の発作が出たのに走り出して。
廊下に倒れて、処置してるときにものすごい抵抗して(笑)」
あぁ、しっかり覚えてますよ。
「呼吸が一度止まって。」
えっ?私一度は死ねたの?
「ひゃんでたしゅけたりひたの!
(なんで助けたりしたの!)」
なんでよ。
「そんなこと言わないで。
佐藤先生が必死に蘇生して、少しして蘇生できたと思ったら『死なせて』『死なせて』って言いながらも、『お母さん、どこ』『お母さん、会いたいよ』って。」
えっ?
「かなちゃんはしっかり生きようしていたよ。」
確かに思ったけど、それはお迎えに来てくれると思って。
もし先に死んでいたら、迎えに来てくれると思って。
まぁ、今は言えないから。
「佐藤先生がもうすぐ来ると思うから、来たら呼吸器外してもいいか確認してみるね。」
鬼佐藤が来ると思うと、首を左右に振っていた。
「佐藤先生、寝ずに自宅に帰らずに病院に泊まり込んでたんだよ。いつ急変するかわからない。って。それに、死にたいなんて言ってたから、いつ目が覚めて、どっかに行っちゃうかわからないからって。」
どこまでするのよ。鬼佐藤。
私が精一杯の抵抗をと思い睨んでいると、
「かなちゃんが倒れる前日の夜も、ほとんど朝までかなちゃんの側にいたんだよ。
佐藤先生にはかなちゃんの気持ちが分かるから。」
あっ。それから、病室の置き時計も、佐藤先生が普段使ってるものだよ。時間が分かるようにって。」
そうだったんだ。
それはお礼言わないと。
売店で時計買って、鬼佐藤の時計は、返さないと。
なんて思っていたところに、
シャッ
カーテンが開き、鬼佐藤の登場。
確かに無精髭が疲れてるのをあらわしてるけど、この人怪物かな?
疲れを感じさせないオーラ。
やっぱり鬼。
「どうだ気分は?」
といいながら早川先生と同じように、私の脈、聴診をしながら、いう。
答えられませんから。
まぁ答えないけど。
「この様子なら呼吸器外しましょう」
と早川先生に言う。
テキパキと早川先生が呼吸器を外す。
口がすかすかになる。
閉じると喉が乾燥してか、痛みが走った。
眉間にシワを寄せたことに気づいたのか、早川先生が看護師さんの持ってきた処置道具から、消毒を取って喉に塗る。
少し楽になった。
「どうだ気分は。」
答えない。
「今日一日はここで起き上がらず寝ているように。」
といい、出て行った。
早川先生が、
「すごく疲れた顔されてたでしょ?かなちゃんのことを本当に心配してたんだよ。
今すごくホッとした顔してたからね。」
えっ?よく分かるね。
「私には鬼の形相にしか見えません。」
と言い放つと早川先生が、
「鬼の形相っ(笑)
ハハハ、かなちゃんにはそう見えてるんだね(笑)」
そんなに笑わなくてもいいのに。
「今日はゆっくり休んでね。
何かあったら、すぐに呼んでね。
ご飯は明日から、ゆっくり始めようね。」
と言って部屋を出て行った。
はぁ、疲れた。また寝よう。



