その頃、小児科医局では。
「それでは、報告」
と医局長が話す。
「4101号室、個室の鈴木かなさん、18歳ですが、喘息のため入院しましたが、養護施設での暴行により、極度に体への接触を怖がります。
また、入院をしてから発作が続いてますが、喘息に対する自覚症状がないため、本人は、なぜ自分が入院しているかも分かっていないようです。
さらに、弱みを見せず、腹部の痛みを隠していました。
それについては現在胃炎と判明し、絶食と投薬により、改善しています。
喘息については原因は不明です。
今後は、喘息に対する自覚、治療に向き合うこと、また原因について様子を診ながら検査していく方針です。
最終的には、通院により喘息の治療ができるよう、生活指導も必要となりますが、まだまだ長期に渡ると考えています。」
と佐藤先生が報告。
そして、朝の報告は終了。
医局長が佐藤先生と早川先生を呼び出す。
「昨日、治療を逃げ出していたね。
精神的な面での治療は第一であるが、治療と向き合うためにも、厳しくするときは、患者であっても、子供であっても、しっかり指導してください。」
と指示する医局長。
「わかりました。」
と佐藤先生、早川先生が答える。
医局長が立ち去ったあと、佐藤先生が、早川先生に、
「二人で厳しくしても効果はないから、私がしっかり指導していくので、早川先生は、フォローをお願いします。
あとは、彼女がどうやったら、心を開いてくれるか。」
といい、佐藤先生は黙った。
早川先生は、
「ひとまず、彼女の精神状態を気にしながら、入院生活や、態度をみようと思います。
その中で話をして、彼女を知ることが一番だと。」
という意見に、佐藤先生もうなづいた。
二人は、それぞれ別々の仕事に向かった。



