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「…あぁ、……優季。……この手は何かな?」
「ん?お前がうなされてたから」
ぎゅっと繋がれたあたしの右手と彼の左手。
「………そりゃ、どーも」
「いえいえ」
手を離すことなく、あたしは片手だけで頑張って起き上がる。
あー眠い。
「今、何時?」
「1時」
「はっ!?1時!?宿題しなきゃ!…つーか、何時までいる気?22時までの約束じゃん」
「いいだろ。親父には連絡してあるし」
「そういう問題じゃないわボケ」
まぁ、いてくれて助かってるけど。
一人だったら、何やらかすか分かんなかったし。
「…マフィン、作っといた。冷蔵庫の上から二段目な」
「ん、あんがとさん。帰るの?泊まってく?」
「…着替えがないだろバカか」
帰るのか。帰るのね。…なんか寂しいな。
絶対わがままだよね、これ。
随分、可愛らしい我が儘を言えるようになったようだ。
「帰り道、知らない人に着いてっちゃダメだよ?」
「着いてくかボケ」
「優季クンならあり得る…いでっ」
デコピン…意外と痛いし。なんかジンジンするし。
キッと睨むと彼はデコピンの感覚にハマったらしくデコピンのエア練習をしていた。
マジであり得ない。
「ねぇ優季。瑠菜元気かな」
「…知るか」
「冷たいなぁ優季クン」
「手は温かいだろ」
確かに。
右手から伝わってくる彼の温かさは心地いい。
ずっと繋いでいたいくらい。
人肌が恋しい。
多分こういうことだと思うなぁ。
こうやって手をぎゅっと握ってもらうだけであたしは満足だよ。幸せなんだよ。
何ではるるんは、あんな方法で人肌を求めてしまうんだろうか。
答えは多分、分かった。
志貴先輩を見て分かった。
はるるんは、知らないんだ。人肌が恋しいとき、どうすればいいか知らないんだ。
頼る人はいる。けど、頼れないんだ。志貴先輩に助けてと求められないんだ。
だから、志貴先輩は単独ではるるんを救おうとして、すれ違って失敗する。
それを毎回繰り返しているんだ。
バカだなぁあの人たちは。
相手のことを大切に想いすぎて、すれ違ってばっかりだ。

