「志貴先輩、無視しないで下さいー」
「……………」
あぁもう何。何が言いたいの。
「黙ってたら、何も始まりませんよ」
「…お前」
「あたしがどうしましたか?」
「…何もない。妹の事黙ってて悪かった」
「別に大丈夫ですよ。人の事ペラペラ喋れませんよね」
駅に掛かっている時計をみると、短針は5と6の中間地点を指していた。
どうしょっかなー。
「先輩、何かしたいことありますか?」
「ねぇな」
「うーん、…」
そう悩んでいると、
「美沙?」
飴色を連想させる聞き慣れた声が耳に入った。
振り向くと、ポケットに手を突っ込んでいるヤツがいて、あたしは自然と顔をしかめた。
「酷いなお前。女として終わったな」
「終わってないから。ぶっ殺されたいの?」
「ホント可愛いげない」
「余計なお世話なこった」
「お前、帰り?」
帰りっちゃ帰りだけど……。
視線を隣にすると彼はまだ複雑そうな顔をしていた。
今日はやり過ぎちゃって、志貴先輩頭ついていけてなさそうだ。
「先輩、今日はこれで帰ります」
「あぁ」
「多分、はるるんはもういないと思うので大丈夫です」
「……………」
「では、また」
「あぁ」
空返事。そんなにはるるんを傷付けたのがショックな出来事だったのか。
「…優季、帰ろ」
「ん。あと、電車が2分で来るから走るぞ」
「え。やだやだ走りたくないんですけど!」
ガシッと掴まれた腕。
まるで逃がさないと言っているようだ。
ブンブン手を振っても離れない彼に少し殺意が芽生えた。
「一緒に帰ろって言ったのは誰だ」
「一緒に帰ろとは言ってない!」
「煩い。走るぞ」
グイッと引っ張られたあたしの腕。
勿論の如く、あたしの体も移動をし始める。
「先輩っさようならっ!」
そう必死に言ったけど、その返事が帰ってくることはなかった。

