確かに彼女が好きで忘れられない、って気持ちも無きにしもあらずだ。
───『私が死んだら、志貴くんは壊れちゃう』
彼は彼女の言葉通り壊れた。
けれど、好きならば分かってるはずだ。
さくらさんが望んでいるが何なのか、さくらさんの幸せは何なのか、とか。
もちろん、彼はこれに気付いていた。
優しい彼女のお願いは、彼の幸せ。
ドラマチックで、幻想的で、夢物語。
彼の幸せ、だなんて相手の考えを無視の自己中心的な願いだ。
あたしなら、そんな反吐が出そうなお願いは絶対しない。
気づいた彼は、気付いてないフリ。
それが、唯一の彼の逃げ道であって、茨の道。
足枷。愛。そんな幻想的な物ではなくて、
「志貴先輩、さくらさんを殺してしまった同士、仲良くしましょうよ」
彼にあるのは後悔。
あたしの中にあるのも後悔。
あたし達は、彼女との時間に後悔している。
「ハッ…?」
目の前の彼は発狂的な声をこぼした。
「だって、志貴先輩はさくらさんが死んだのは自分と付き合ってたからだと思ってるんでしょ?」
殺した。なんて、言い過ぎな気がするけど。
「あたしも、あの時さくらさんのお願いを受け入れたから、あたしはさくらさんの心残りを除いてしまった。あの人の生きる意味を取っちゃったんですよ」
彼女は優しいようで、本当は残酷。
死んだはずなのに、今だあたし達を苦しめる。

