「さくらさんって、綺麗ですよね」
「お前が言うと嫌味に聞こえる」
「さくらさんって、優しいですよね」
「お前と雲泥の差だな」
「さくらさん、大好きです」
「死ね」
なんなのこの理不尽な会話。
一方的にあたしが罵倒されてるだけなんですけど。
誰得会話だよ。SMプレイ大好きカナちゃんしか得しないんですけど。
カンッ。あまりの苛立ちにパンケーキを刺すフォークの勢いがついて、皿に当たる音が鳴る。
ビグッと微かに彼の肩が揺れた気がした。
この甘党モンスターめ。あまりのイチゴタルトの美味しさにあたしの存在を忘れてたでしょ。
イチゴタルト。なかなかの強敵である。
「志貴先輩。さくらさんに言われませんでした?」
イチゴタルトと真っ正面から戦っても無駄だ。
どう考えても、彼にとっての魅力はあたしよりイチゴタルトの方が上。
だから、勝手に話の続きをすることに決めたのだ。
───『志貴くんには幸せになって欲しいから。もう私と違う誰かを好きになって欲しいの。って言っちゃたんだよね』
彼女らしくない声で言われた言葉は、彼女の本心なのか本心ではないのか、定かでない。
その言葉に正しいとか間違っているとか存在しないのだ。
「さくらさんは、志貴先輩の幸せが一番なんです」
「………………」
「志貴先輩って、その桜のピアスをつけて幸せなんですか?それって、志貴先輩の足枷になってませんか?」
「……………なってねぇよ」
嘘つき。
「なってますよ。すんごくなってます。さくらさんが忘れなれないんじゃないですよね?」
さくらさん以上の愛せる人はもう居ない、とかそんなんじゃなくて。
「さくらさんが死んだのは自分のせいだって、思ってませんか?」
最初は不思議でたまらなかった。
何故彼がそのピアスをつけているか。
最初は、さくらさんが好き過ぎて忘れられないのかと思ってた。
けれど。
日が経つにつれ、その推理が可笑しいと思い始めた。

