「実はあたし、さくらさんと知り合いなんですよね」
「………………」
目をそらす彼。
その様子からはるるんが本当に志貴先輩にあたしのことを言っていない事が窺える。
あの変態星人は何を考えて教えなかったのか本当に謎。
「さくらさんって、綺麗な人でしたよね」
黒い綺麗な髪といい、少しピンクに色づいた頬といい、ぷるんと潤っている唇といい。
「ずっと、思ってましたよ。お似合いだな、って」
白の世界から見えた志貴先輩とさくらさんはとてもキラキラしていて、憧れていた。
「だから、あたしはビリビリ引き裂かれていくさくらさんと志貴先輩が見てられなかったんです」
「……はっ?」
喫茶店に入って初めて聞いた彼の声はひょんとしていた。
「どこか気になりましたか?」
薄茶色の液体の入ったグラスを傾けながら聞いた。
「なんで、お前、…俺らの事知ってんだよ」
なんだその事か。
「大丈夫ですよ。ストーカーはしてません。それにあの時は、まだ二人の名前は知りませんでしたし」
「…………………」
「んでまぁ、あんなこんなでさくらさんと知り合いになりました」
「どうやって、さくらに漬け込んだんだよ」
「え。何その言い方。話しかけてくれたのは、さくらさんですよ?」
「…………………」
「…心当たり、あるはずですよ。北府高校の合格発表日。さくらさんがいなくなる2日前の桜並木の下のベンチ」
思い出したように、小さく彼はため息を吐き出した。
「志貴先輩は、さくらさんの隣に座ったとき、そこは温かくて、さくらさんが誰かと居たのを気づいてましたよね」
「……………あぁ」
「でしょでしょ。その志貴先輩が気になっていた人があたしですよ。…驚きました?」
「…黙れ」
「それは、無理ですよ。お話ししなきゃ、だめですもん。さくらさんに頼まれたってのに果たさないなんて、イヤですもん」
「頼まれた、……?」
あ、食いついた。
「はい。頼まれました」
頼まれたとき、思った。
彼女は、優しいのに酷く残酷で、自分勝手で、悲しい人だ。と。

