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「おいッ、待てよお前。晴をどうするつもりだ」
なんだかんだで、あたしの走りについてきてくれる彼。
最初の頃なら無理矢理手を叩き落としているだろう。
なんどかんだで、彼も優季と同じ優しい人だ。
近くの店の扉を開けて、中に入る。
「志貴先輩、ナイスランですよ。きっと、はるるんも追い付けまい」
「追い付けないつーか、店に入ったから、晴が気付かないだけだろ」
「まぁまぁそんなこと、気にせず気にせず」
ぐいぐいと、入り口付近で立ち止まっている彼の背中を押す。
『何名様ですか?』
と店員さんがあたし達に聞く。
「2名です」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
にっこりと営業スマイルをするお姉さん。
お姉さんのあとについて行き、席に座る。
『ご注文が決まりましたら、ベルを押してください』
定型文を言った彼女は、小指でワンクッションをして、水が入ったコップを静かに置く。
一礼して、彼女を去っていったのを確信して、志貴先輩の方へと向き直した。
「何頼みますか?志貴先輩」
「……晴をどうする気だよ」
「ん?はるるんはこのまま放置。もう帰ってもらうの」
「お前、最低だろ」
「はるるんの鉄の心なら大丈夫だよ」
「そうじゃなくて、」
「人間的に最低ってことですか?」
シラリと言ったせいか、彼の表情が一層厳しくなった。
「そんなこと分かりきったことじゃないですか?それに、はるるんのためのラブホ襲撃の時にも言ったはずです」
「………………」
彼は、キッとあたしを睨む。
「あたしは、目的のためなら手段は選ばないタイプです」

