「そーいえば、もう帰る時間?橋本くんの説教コースは何時オーバーからー?」
「7時!今日はおまけだって!30分の抵抗のおかけだよ」
7時というのは、実は嘘。
本当の優季との約束は5時。
もう6時になっているし、優季との約束は思いっきり破っていることになっている。
多分、優季は分かっているに違いない。
あたしが5時に帰ってこないことを。
証拠に、開けたスマホには、電話もメールも1つ入ってない。
優季は優しいから。
あたしがどんな理由で今日この人たちといるかを知っているから。
彼はあたしを野放しにしている。
ここまでパーフェクトに過ごしてきたのだから、最後の最後でへまはしないだろうと思っているに違いない。
あたしだって、そうだ。
7時まで、髪の毛一本まで神経を尖らして、構えているのだから。
ほら、きた。
ぐらりと揺れる視界は目の前の彼らを霞ませる。
ガンガンと頭に響く警告音は、頭をかち割る勢いで高々と響く。
まるで、ここで諦めろ。と言っているようで、悔しくてたまらない。
あたしは負けず嫌いで、それをはね除け、意識ある足で、地面に立ち続ける。
あと、少しなんだから。
優季は優しいんだから、そんな彼に手間をかけさせる訳にはいかない。
「志貴先輩」
「なんだよ」
「…………………いや、何もないです。ただ呼んだだけです」
桜のピアスが太陽に対抗するように反射して光る。
それが目印で、目的。
ふわりと思い出す彼女は、あたしに確認するように笑った気がした。
「はるるん。飲み物買ってきて」
「はいー?なんで、俺ー。パシりはやだよーん」
「は?お前、俺にトランプ買いに行かせただろ。さっさと行けよ」
「志貴も美沙ちゃんの味方するの‼?あっそ。晴くん、怒ったー。買ってくるよ買ってこりゃいいんでしょー?」
「自分に君づけとかキモいよ」
「…………………」
「もう美沙ちゃん嫌いッ」
うそ泣きをしながら、少し離れた自販機に走っていく彼。
その可哀想な彼の背中を忘れないように、目に焼き付ける。

