また風が教室に入った。
カーテンが膨らんで、存在を強調させる。
「そんなんしてねぇよ」
「そーなの?ふーん、…………あっそ」
つまらなさげに晴は言い捨てた。
「…………………」
「志貴、帰ろっか」
「そうだな」
窓を見ると、さっきまでいた二人はもういなくて。
その場には、冷たい風が吹いていた。
テキストをしまって、リュクサックを肩にかけ、冷えた廊下に足を伸ばす。
さっきから黙りしている晴は、何を考えているのだろうか。
橋本優季は何故アイツと付き合わないのか。
アイツは何を思って、俺らを避けるのだろうか。
分からない。全然、分からない。
外に出ると、冷たい空気が容赦なく肌を突き刺す。
「……寒」
晴は意外と寒がりで、マフラーに顔をうずくめた。
空を見上げると、三日月が出ていた。
ため息をつくと、空気が白く色付く。
「ため息すると、幸せにげるよーん」
「……あっそ」
「冷たっ。塩対応ー」
「知るかよ」
何かが起こるような起こらないような。
そんな予感がしたとある冬の出来事。

