「晴」
「何?志貴」
「帰るか?」
「そーだねぇ。帰ろっか」
晴はそう言いながらも、窓の外を眺めていた。
「………あ、」
晴の漏れた声の先には、さっきまでここにいたアイツと橋本優季。
ミルクティー色の彼の髪の毛が、風に撫でられた。
「……窓の戸締りしなきゃ、いけないね」
「そうだな」
外の彼女らは、楽しく会話をしている。
遠くから見れば、美男美女のカップル。
「………文化祭。志貴、美沙ちゃんをコクられてたでしょ?」
何を急に言い出すかと思えば。
「それがどうした」
「どうしたじゃないよー。なんで、断ったのー?」
また風が教室に入ってきて、今度は俺の髪を揺らした。
なんで、こんなに寒いのに窓が空いているのだろうか。
「……好きじゃなかったから。俺はさくらが好きだから」
「……………ほんとに?」
「あぁ」
「藤崎ちゃんってさ、残酷だよね。あんな愛くるしい見た目なクセにやること本当にえげつない」
「………何の話だよ」
「いやー?こっちの話ー。…それよりさ、志貴はさ、なんで美沙ちゃんが好きじゃないの?」
「は?」
「だから、なんで好きじゃないのかって聞いてんのー」
「…タイプじゃねぇ」
タイプ、ねぇ。晴は意味深げに重い空気を吐いた。
「俺さ、思うんだけどさー」
少しの沈黙のあと、初めて彼の低い声を聞いた。
「遠慮とかしてんのなら、迷惑」
「……遠慮?」
「そ。遠慮。親友の初恋ために自分の恋は諦めよー、とかさ」
「……………………」

