「……………ッ、」
思いっきり、彼との体を突き放して。
「美沙ちゃん…ッ」
それでも離れないで、あたしの名前を呼ぶ彼に申し訳ないと思いながらも、体に馴染んでいる武道の技術を使って、無理矢理放す。
その振動で片手に持つ看板が落ちた。
もう終わり。
これが、最後。
「ごめん、っ…」
溢れそうになる涙を必死に止めて、彼の目を見る。
困惑、驚愕、哀傷。
「ほんとに…っ、ごめんッ」
彼に背を向けて、走り出す。
芸術棟を出て、2年校舎を除く校舎を全て繋がる渡り2階の外にある渡り廊下。
メイド服のスカートが揺れる。
揺れるフリルは白色で、無性にそれに腹を立てる。
「はぁはぁ、…っ」
息が上がる。
優季こんな姿見られたら、怒られちゃう。
後ろを振り向いて、少し遠くであたしを追いかけ出す彼を見る。
このままなら、逃げれる。
近くの校舎に逃げ込むように入る。
近くの校舎は3年校舎。
2年生が主に出し物を出している校舎であるここは、一番クオリティーが高く人気であり、人が多いのだ。
きっと、その人混みに紛れたら、彼はあたしを見つけられない。
迷うことなく人の波に潜るあたし。
何をこんなに必死になっているのだろうか。
そう思うと、何もかもが馬鹿馬鹿しい。
「おい、バカ」
ぐいっ、と引かれる腕。
「……志貴先輩?」
「走るな。迷惑かかるだろ。つーか、晴は?」
はるるんとは、サヨナラしてきたよ。
「……………あ、えっと。鬼ごっこしてて、……志貴先輩、もう交代ですか?」
「あぁ」
「なら、一緒に逃げましょ?はるるんに捕まったら、たこ焼き奢らされるんですよ」
有無を言わせないように彼の手をつかんで、また走り出した。

