「ねぇ美沙ちゃん」
「なぁに?はるるん」
「離れて、いかないでね」
「…………………」
ごめん。それは答えられないよ。
胸を鷲掴みするような気持ちと反比例して、彼はもっと強くあたしを抱きしめる。
少しでも、彼の気持ちに答えられるのなら。
あたしは、ぎゅっと初めて彼の腰に手を腕を回した。
ビクッ、と体を震わせた彼。
嫌だったのかも。
そう思って腕を戻そうとすると。
離さないで、と耳元で彼の甘い声がそれを止めた。
「……俺さ、考えたわけ」
「うん」
彼の声は甘さを含む真剣な色。
「前、フルッティープ○キュアの映画を見に行ったときあったじゃん?」
「あったね」
寒くなりかけてきた、あの時期だ。
「あの時、美沙ちゃん寝惚けて。俺を藤崎ちゃんと勘違いして、」
「え、」
どくん、どくん。
どくん、どくん。
心臓の音が嫌な音に変わっていく。
彼の呼吸の音がやけに鮮明に聞こえる。
彼の心音があたしの心音に重なる。
心音は何かを数えているような。まるでカウントダウンのよう。
「美沙ちゃんは、こう言ったんだよ。
さくらさん、なんでそんな約束をするの?
なんてあなたは残酷なの。
あたしの気持ちは?
あたしは恋しない。
好きになってない。
って」
彼がそう言った瞬間、
───何かがコワレタ音がした。

