ぱくり。
また一口、フルーツタルトを口に入れる。
口に広がるフルーツの酸味と甘さが広がる。
「君さー、話そらしたでしょー」
「ばれちゃってたかー」
目の前の彼も砂糖菓子みたいに甘ければいいのに。
まるでフルーツタルトみたい。
緩い緩い彼の口調は甘いフルーツの味。
けど、意外と勘が鋭くて、そして酷く厳しくのがフルーツの酸味。
意外とあたしはポエマーの才能があるのかも。
あの松尾芭蕉もビックリの天才的才能の開花の予感。
「ねぇ君。何者?」
甘くて。けれど、刺々しい彼の言葉は王手をかけようと言葉を落とす。
「魔法使いです……って答えればいいですか?」
彼に負けじとヘラリ軽く笑ってみせた。
「真剣に聞いてんだけどねー」
目を細めて喉で引っ掻けるような笑い方で笑う彼を無償に殴りたくなった。
けれど、あたしの中にあるのは絶対的な自信。
屋上にいた時、心の中にあった絶対的な自信。
それは絶対的であり揺るがない自信である。
「確かにあたしはさくらさんと知り合いだよ?」
一回しか会ったことはないけどね。
「知り合いだから葬式に出た。……なんか文句ある?」
「藤崎のこと知ってんのなら、志貴のこと知ってんでしょ」
そんなにさくらさんと志貴先輩は有名なカップルだっだのね。
初耳情報だ。
「あたしとさくらさんは学校で知り合ったんじゃなくて、桜並木で知り合ったの」
あれは3月下旬。
北府高校の合格発表の帰りのことだった。
桜がまだ蕾だった時のことだった。
「話かけられたの」
──『ねぇ、北府高校に入学するの?』
思い出されるのは、儚げに笑う彼女の笑顔。
「そもそも、さくらさんと知り合い=志貴先輩を知っている、なんて公式があるわけないじゃん」
「…………………」
あたしの勝ち。
はるるん、君は情報不足なんだよ。
敵と戦うとき、必要なのは情報だ。
戦力も戦術も大切だけど、最も必要なのは情報だとあたしは思っている。
情報がなければ、正しい戦術も、効率のいい戦力分担も出来ない。
戦力も戦術もハイスペックでも、がむしゃらにしていたら自滅だ。

