沈黙が流れる。
秋の風があたしたちの間に流れる。
時間がゆっくりと流れる。
ふわりふわり、とあたしの髪も流された。
志貴先輩は形のいい唇を徐(おもむろ)に開けた。
「お見舞いに行ってやる」
「え、……………?」
志貴先輩、なんて言った…?
「ねぇはるるん。耳がおかしくなったかも。志貴先輩がお見舞いに行ってやる、なんて言った気がするんだけど」
「ばっちり、聞こえてんじゃないのー。美沙ちゃん」
「え、」
お見舞い‼?
いや!嬉しいけども!
「あたしの家に行くつもりですか…?」
「じゃあ、どこに行くんだよ」
「どこへでも」
「殴られてぇのか?」
「いえ、滅相もない」
うん。この様子だとマジのようだ。
「どうして?」
「前。晴とお見舞い来てくれただろ」
思い出すのは春の日の出来事。
はるるんにまだ警戒されてて、志貴先輩の家まで20分も遠回りをさせられて、志貴先輩の家に入れず終わったあの日。
あのときに戻りたい。
ただ漠然にそう思った。
「あの、あたしの家は2駅先なんですよ?お金とかかかりますよ?」
「別にいい1回ぐらい」
1回だけなんだね、それ。
家に見られたら、いけないものってたくさんあるんだけど。
パンツとかパンツとかパンツとかパンツとかパンツとかパンツとかパンツとかパンツとかパンツとか。
「…………」
さてさて、どうしようか。

